第8章 In the closed closet
「そういえば、さっきの女の子はどうしたんだろうね」
アルがふと思い出したように言う。
ガチャン!
食器が落ちた。
あわあわと謝るのはフェリちゃんだ。
「あ、あぁ、逃げ出したあいつか」
生返事のアーサーの声も上ずっている。なぜだ。というか“逃げ出した”なんて誤解をうみかねない発言は慎みたまえ。
「二人ともこのあたりで、日本人の女の子を見なかったかい? 黒のワンピースの」
……はーいここにいまーす……
「いや、見ていないが」
「おっ俺ずっと厨房にいたからわかんないよ」
ルートの名演技っぷりに感動しつつ、なんでそこまで私の存在を隠したがるのか、考えていた。
「実はね……俺のところにある情報が入ってるんだ」
――ちょっと待て、物凄く嫌な予感がする。