第8章 In the closed closet
と、今度は足音とフェリちゃんの声が聞こえてくる。
これは――マズい、非常にマズい。
「ルート、やっぱり薬飲んだら――ってえぇ!?」
「やぁ、お邪魔してるんだぞ!」
フェリちゃんの声は困惑マックスだ。
だから余計にアルの声が爽やかに聞こえる。
「あ、うん、ようこそ……?」
ひどい温度差だ。
絶賛戸惑ってらっしゃる。
今にも「公子ちゃんは?」と言い出しかねない。
うがーっヒヤヒヤする! ルートの心情はいかばかりか!?
「あれ? ルート――」
、、、、、、、、
「お客は全員揃っただろ。早く席につけ」
「ひゃっひゃいぃ!」
……声が怖すぎます、隊長。
地獄の底から這い出してきたようなそれに、空気がピシッと凍りついた。
アルとアーサーの沈黙は、それを皮肉と受け取ったその気まずさ(主にアーサー)だろう。
一方フェリちゃんと菊の沈黙は、ガタガタ震えてるせいな気がする。
けれどたぶん、菊はなにかを察してくれるだろう。
見えないので、ただの希望的観測だが。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
誰も、なにも言わない。
ただ椅子を引く音や、カチャカチャと食器を配る音だけが、白々しく響いていた。