第7章 目覚めた場所は
本当に、なにをやってるんだろう。
来て早々に体調を崩し、迷惑をかけ、命の恩人を困らせ――なにをしに来たんだ。
しゃくりあげながら、謝る言葉を繰り返した。悔しさと申し訳なさと、情けなさでいっぱいだった。
「すまない、こっ、こういう時どうしたらいいのか――」
ルートは目をまわして言葉につまっていた。
うろたえ動転しきっている。
このままでは、むしろルートが泣いてしまいそうだ。
いろんな意味でダメだ、この状況をなんとかしなければ――
「すみません顔洗って出直してきますっ!!」
返事を待たずバターンっとドアを開け放ち、外に飛び出した。
つまりお手洗いに行きたいということだ。
泣き顔を早く回復させないと――
冷水でどうにか顔をもとの状態にし、しばらくして戻った。
「質問に戻るが、いいか?」
戻った私に、ためらいがちに尋ねてくるルート。
土下座したくなりながら、私は全力で頷いた。
「主人は一週間前、本田家に現れたあの主人か?」
「!?」
「……やはりそのようだな」
驚愕する私に確信を得たようだ。ルートは頷く。
というか、一週間だと?
菊と別れてから一日すら経ってないのに。
時間の流れの違いが、うまく理解できない。
困惑している私にルートは続けた。
「本田から話を聞いている。まさかこんなに早く対面できるとは思わなかったが……その……自由に行き来できるようになったのか?」
「おそらくですが、行くことはできます。帰ることはまだ……」
「そうか。どうやったんだ?」
「よくわからないんですが、ラジオをつけたら来れました」
「ふむ、ラジオか……。持ってきてるか?」
「……すみません、持ってません」
「いや、いい」
ルートは失敗を許す上官のように言った。
馬鹿者! と叱ってくれれば、どんなに良かったか。更に申し訳なくなる。
というかルートは、私の与太話を信じた菊の与太話(失礼)を信じたのだろうか? フェリちゃんは?
そして仮説だが、触れているものは、一緒に移動できる。
湯のみや服がそうだった。
でなければ私は、どこかのお兄さんのように、裸で飛び回る羽目になったろう。
なのに、二度目はきちんと持っていたラジオが、ない。
……どういうことなんだろう。