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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第5章 うつつか夢か


「!」

バッと顔を上げた、菊の黒い瞳が私を突き刺す。

言いたいのに、言いたいことが多すぎてうまく言えない、そんな表情をしていた。

……そんなにマズいこと言ったかしら。

「菊さ――」

言いかけ、続きが喉につっかえる。

私の手から、粒子のようなものがきらきらと立ち上っていた。

強い酩酊感。

頭がふわふわする。

本能的な危機意識からか、湯のみをぎゅっと握りしめていた。

「……公子さん?」

その声も、その顔も、すり硝子越しのようにぼやけていた。

突如、菊の姿が急速に遠ざかる。

狭く暗くなる視界のずっと奥。

闇にひたされた中心点へと、吸いこまれるように。

ただの一瞬で。

「待っ――!!」

のばした手の先を黒が支配する。

それはまもなく、背後からさす光に引き裂かれた。

なにが起きているのか全くわからない。

けれど否応なく、光が私を覆い尽くしていく。



視界が真っ白に染まる――
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