第47章 『臨時ニュースをお伝えします。』
なんの脈絡もなく、突然だった。
かわいらしくにっこりと笑って、携帯を取り出すみたいに、なにげなくポケットから銃を取り出して。
そして撃った。
止める間もなかった。
我に返ったアルフレッドが銃を構え、その銃口がとらえたのは、――別人だった。
彼女の瞳は困惑と、怯えに沈んでいた。
こうやって、今の自分がそのときの記憶をリプレイすれば、“別人だ”ってわかるのに。
『君を信じたのは間違いだった!』
彼女に放った言葉が、脳内でリフレインする。
「彼女に、ひどいことを言ってしまったよ……」
「……私は、お二方ともが、ちゃんと話す必要があると思います」
「俺の話なんて、もう聞いてくれないかも……」
うつむくと、下がる視線が菊の腕をとらえる。
長袖の下に、まだ包帯を巻いているだろうか。
アルフレッドの銃弾がかすった傷は軽傷だったが、彼女は、アルフレッドが菊にしたことにも怒っているはずだ。
自分が彼女の立場なら、考えるまでもないことだった。
「おや珍しい。貴重なネガティブアルフレッドさんが見られるとは」
「菊……!」
「ふふ、すみません。でも、そんな心配をしなくても大丈夫ですよ」
いたずらっぽく菊が笑う。どこか老獪さも感じさせる表情が、今は頼もしく感じてしまう。
「公子さんは、アルフレッドさんのことが大好きですから」
「ほ、本当かい?」
「もちろんです。この"私”が言うんですよ」
フン、と鼻息をひとつして、胸までちょっと張ってみせる菊。
その言葉と表情が、菊がそう言うのなら、本当にそうなんだろうと思わせてくれて――視界が急速にぼやけていった。
「き、菊うう~~~~!!」
「おやおや」
わあっと泣きつけば、よしよしと頭を撫でられる。
「頑張りましたね」という言葉に、緊張の糸がやっと途切れた気がした。
堰をきったように溢れる涙が、黒くて嫌な感情を洗い流してくれるようだった。