第44章 Aiming for an “APPLE”
気づくと、菊たちはゴーストタウンから戻ってきていた。
マシューや自分を治療するため、菊が救急依頼をかけようとした瞬間、アルフレッドの端末がアラートを報せた。
それは、ニューヨークの街で大規模な機械の誤作動が発生している、というものだった。
悪運極まることに、菊たちがゴーストタウンから戻ってきたのは、ニューヨークだった。
交通網は軒並みマヒ、ドクターヘリも電子制御で墜落の危険がある。
仕方なく近くの病院まで自分たちの足(と言ってもアーサーが運転する車でだが)で行くことにしたが、このとおり、大渋滞である。
「大丈夫ですからね、もうすぐ病院に着きますから」
「……」
菊は後部座席に優しく声をかけた。
バックミラーに映るのは、ひどく憔悴した様子のアルフレッドだ。
隣で眠るマシューの手を握りながら、唇を堅く結んで顔を真っ青にしている。
さっきから、ずっとこんな感じだ。
アラートを報せてきた上司は、アルフレッドの状態を見て「事態の収拾はこちらでします」と言ってきた。
今は兄弟に付き添ってあげてくださいと、そんな建前で。
マシューの怪我は一刻を争うものではない。
ただ、怪我をした不可解な状況と、この異変の下では、何が命取りになるかわからない。
――ロヴィーノという“前例”がある。