第44章 Aiming for an “APPLE”
『う、うん! 電波塔までの最短ルートとデコイコントロールですね!』
「よし。ヒロイン救出とボス撃破のパーティーとしちゃ、バランスが微妙だけども……」
ヨンスが私とエドの顔を見る。
いつもの調子に戻ったように、いや、むしろ普段より元気そうに振る舞う彼に、気づいた。
それは精一杯の、空元気なのだと。
瞳の奥がどうしようもなく、悲嘆と恐怖に暮れていたから。
――香くん、
――あなたを救わなければ、ヨンスは潰れてしまう。
「作戦、開始」
ヨンスはそう言って、にぃ、と唇の端を吊り上げた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「どうなってやがる!」
「わかりません……私の専用回線も通じません。アルフレッドさんのも通じないようです」
「つーーかあのクソ髭どこ行った!?」
運転手を務めるアーサーは、今にもクラクションを鳴らしかねない勢いだった。
助手席の菊は、そんな彼をまあまあと諫める。
ニューヨークの街は、そこらじゅうでサイレンが鳴り響いていた。
その耳が痛くなるような騒音に負けないくらいの声量で、アーサーが怒鳴り声を上げる。
アーサーの極限まで苛ついた表情は、彼が菊の前ではあまり見せないものだった。
それだけ事態が深刻なのだろうと、菊は奥歯を噛み締める。