第44章 Aiming for an “APPLE”
「ったくお前ら、好き勝手しやがって……っ!」
アーサーの怒りは自分にも向いているのだろうと思い、菊は気まずい苦笑を浮かべた。
“あんなふうに”銃を構えるアルフレッドの前に出るなんて、無謀にも程がある。
アーサーは菊のこともそう叱りたいに違いない。
それから、いつの間にか姿を消したフランシス。
彼の行方もわからないが、同じように怪我をしていたはず。
あとは、公子だ。
エドァルドから「こちらで保護した」と一報を受けている。
バルト三国なら手荒な真似はしないだろうし、イヴァンから逃げ出した先とすれば、これ以上の適役はいないだろう。
とは言え、菊にとっては国民の一人だ。
その身を案じずにはいられなかった。
『君を信じたのは間違いだった!』
そう言い放たれ、見えない銃弾で心臓を貫かれたような彼女の顔を思い出す。
彼女はこれ以上ないくらいに傷ついていた。
彼女が抱えていたものを無理でも聞き出すべきだったか。
今になって、菊の胸にはそんな後悔が渦巻いていた。
アルフレッドの顔をそっと見やる。
それを言った本人も、皮肉なことに同じくらい傷ついていた。