第43章 In the Ghost town
「ここはプログラムの中で、僕たちは“異変”に関係するある端末からアクセスしています。
今日、何者かから『鍵を使い、プログラムを起動せよ』とのメッセージがありました。
端末上で勝手に解凍された隠しファイルに、公子さんが持っていた“double edged sword program”というチップを読み込ませると、ここにアクセスが可能になりました。
それまでは、このようなプログラムの存在さえ僕たちは知りませんでしたが……」
エドはよどみなく、しかしゆっくりと言った。
ひどく疲弊した様子のヨンスを気遣ってのことだろう。
「現実世界では、あなたと香さんは行方不明となっています。どうやってここに来たのか、なぜここにいて怪我をしているのか、教えてくれますか」
「……わからない……気づいたら、この家にいて……」
ヨンスは怪我をしていない方の手で頭を抱えながら、もう片方の手をきつく握りしめていた。
圧迫のあまり白くなり、手のひらに爪が食い込んでしまいそうだったので、とっさにその手をとる。
両の手のひらでヨンスの手を挟むと、彼は少しだけ肩をびくっとさせた。
その手は冷たく、小さく震えていた。
「私たち、力になりたいんです」
――香は、どこに?
何よりも大きな疑問を読み取ったのか、ヨンスは祈るように一度目をつむる。
大きく息をつくと、ゆっくりと話し始めた。
どこの国のものかはわからないが、とあるプログラムのパスワードを解析していたこと。
その最中に謎の電話があり、気がついたらこの家にいたこと。
外を調べていたら香の様子がおかしくなり、突然ナイフで斬りつけられたこと。
無我夢中で駆け戻ったら、私たちが現れた――そういう経緯らしい。