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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第4章 夢かうつつか?


「つぎに、物体の不自然な場所移動です」

これがまた、よくわからない。

「暫定的に、消えたところを“消失点”、消えたものが再び現れたところを“再帰点”と呼んでいます」

なんだか仰々しい用語が出てきた。

数学的な響きで、頭が痛い。

「そのどちらにも、不可思議な電磁波が計測されます。しかし公子さんの現れた地点では、それがなかったので……」

「だから、私がその異変で移動してきたのではないと、わかったんですね」

菊が頷いた。

わかるような、わからないような……。

それを察知したのか、ゆっくり菊は話しだす。

「要は、ものが勝手になくなり、勝手に違うところからでてくる、ということです」

「勝手に……」

「ええ。私も同人――いえ本などがなくなっていて困っているんです」

とても真剣な表情。

彼にとっていかに重大な問題かがわかる。

けれどまだ、その大変さが実感できない。

「想像してください」

パッとしない表情の私に、菊が眉をよせて苦々しく言った。

「アメリカの国家機密文書が、ロシアにでも移動したら……」

「――ッッッ!!」

ぎゃぁぁぁと轟音レベルの絶叫を、息とともに飲みこむ。

それはその……ひ、非常に世界がご愁傷様ですね……。

「ですから、皆さん戦々恐々としておられます」

「よく、わかりました」

素晴らしく最悪な例えに、頷くばかりだった。



つまり、テレポーテーションのようなことが起きているらしい。

それに電磁波というキーワードも気になる。

「そのせいか、治安が悪くなったりしている国もあります」

菊が付けたした言葉に、考えを改めた。

この異変にかこつけた犯罪が、容易に想像できる。

致命的な“移動”が起こる前に、なんとかしなければならない。

――二人が無理するわけか。
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