第39章 錯綜と進む針と
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「あ、これなんかいいんじゃない?」
「誰が着るかンなもんっ!」
「ちがうって、公子ちゃんにだって」
「あ゛!? あー……悪くねぇと思うが――」
「なに~? それとも坊ちゃんが着たかったの? このかわいいワ・ン・ピー・ス」
「てめぇ……今ここでその顎更地にされてぇのか……」
アーサーはフランシスとともに、会議場にほど近いショッピングモールに来ていた。
会議が一旦休憩状態になったところで、フランシスから外出に誘われたのだ。
到着が遅れている国もあり、再開まではそれなりの時間を要しそうだった。
そういう事情もあり、仕方なくアーサーは付き合ってやることにした。
まさか、服を見にこんなところに来るとは思っていなかったが、同時に、フランシスの目的は別にあるのではとも思った(これだけもまぁありうる……)。
マシューのことについて、誰がどのくらい情報を掴んでいるのかはわからない。
だが、フランシスもまた、アルフレッドの違和感に、なにか勘付いたのかもしれなかった。
腕を掴んできたアルフレッドの顔を思いだす。
いやに素直で、弱みをみせるような物言いは、ぜんぜん彼らしくなかった。
「……で、なにが目的なんだよ」
不機嫌そのものの声で尋ねる。
うきうきと服を選んでいたフランシスは、腹の立つわざとらしいため息をついた。