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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第38章 ゼロ地点の結界より


ふー、とため息を吐いて、香は眉間に手を当てた。



ヨンス宅でパスワードを解析中、かかってきた携帯電話に出たら、

『ちょっと知り過ぎだよ、君たち』

そんな声が受話器から流れて――

気がついたら、全く知らない場所にいた。

これまでの2週間あまりの悪戦苦闘を記録したチップは、なぜか真っ二つに割られ、ヨンスの手にあった。

何が起きたのか、ヨンスにもわからないらしい(もしくはわかりたくない)。

というか、ここがどこかということよりも。

件のPCと、冷蔵庫を開けっ放しにしてきたことに、ヨンスの意識は完全に釘付けにされていた。

再びため息をつきたい気持ちで、あたりを見回す。

ここは、一軒家の一室だ。

電気もガスも通っており、蛇口をひねれば水が出てくる。

棚や冷蔵庫には、当分困らない量の食べもの、飲みものが入っていた。

家具も、カーテンといった装飾品も完備されていて、自分たちが来るまで誰かが暮らしていたような生活感がある。

ひたすらに、気味が悪かった。

まるで誰かに用意された、軟禁部屋のようだったからだ。

いや、一番気味が悪いのは、室内ではない。

漠然とした不安を感じながら、窓をあける。

曇り空は無表情で、風も、鳥の声もなく、あたり一帯は静寂に包まれていた。

まわりは空き家だらけで、ひとっこ一人、車一台もない。
   、、、、、
そう、誰もいないのだ。

「……Ghost town」

地平線へ広がる街並みは、まさにそう呼ぶのがふさわしい静けさに支配されていた。
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