第38章 ゼロ地点の結界より
「……す、す、す」
奇怪な鳴き声をあげるヨンスを、香は何事かと振り返る。
「すっげええええええええ!!!!」
部屋いっぱいいっぱいに、ヨンスの叫び声が響き渡った。
ついにおかしくなったのだろうか。
2週間分の作業がパーになったことを思えば、まぁ無理もない。
「what?」
「このPC! これ1台で性能がスパコン並みなんだぜ!」
通販番組の謳い文句とともに、ヨンスは目の前のPCを指さした。
なんの作業をしているのか、香にはさっぱりだ。
しかしヨンスの瞳が煌々と輝いているところ、凄まじく高性能らしい。
見た目は、ただのありふれたデスクトップPCだ。
たしか、スパコンもといスーパーコンピューターは、たくさんの計算機械の集合体、みたいなものではなかったか。
耀に自慢げに披露されたスパコン――大部屋いっぱいに並べられた何百もの筐体――「天河2号」を思い出す。
あんな仰々しいものと、目の前のなんの変哲もないPCが同じ性能だなんて、絶対にどうかしている。
「うおおおお! なんなんだコレ! すごすぎるんだぜ!」
……それを嬉々として使っているヨンスも、同じくらいどうかしている。