第4章 夢かうつつか?
菊がひいてくれた椅子にぎこちなく座る。
「ちょっとお待ち下さい」
そう言い、菊は台所の方に向かった。
残される私と耀。
彼の背には、いつも菊が羽織っているような、渋い色合いの服が被されている。
突っ伏したテーブルには、ペンが散乱していた。
「なにこれ……」
私は思わず、声をもらしてしまう。
まさに山のような、書類があったのだ。
しかもあろうことか、カラフルにマーカーが引かれていたり、赤で細々書き込みされていたり、一面小さい数字の羅列だったり。
一目見ただけで、目眩がした。
「じじいなのに君達無理しすぎ……」
規則正しく寝息をたてる耀を見ながら、私は呻いた。
それからすぐ、菊が戻ってきた。
手のプレートには、三つの湯のみ。
「粗茶ですが」
「ありがとうございます」
菊の淹れた緑茶は、柔らかな湯気を立ちのぼらせている。
勿体なくて、とても飲めない。
耀のそばにおき、最後に自分の湯のみをおいて、菊は座った。
「さきほど知人から紅茶を頂いたのですが、公子さんが苦手な種類でしたら申し訳ないので……緑茶でよろしかったですか?」
さきほどって、こんな夜にお客様でもいたのかな?
紅茶を菊に持ってくる“知人”なんて、一人しか思いつかないんだけど……
「はい、緑茶大好きなので!」
「それならよかったです」
笑いをかみ殺しながら返事をする。
菊も安心したように微笑した。