第4章 夢かうつつか?
しばらく沈黙が続いたあと、
「「あの!」」
私たちは同時に声を発した。
途端互いに譲り合う。あぁ、なんというデジャヴ……。
仕方なく、私から話しだすことにした。
うまく言葉が出なかったので、単刀直入に言う。
「私はこの世界の〝外側〟から来たのかもしれません」
菊は、表情を変えなかった。
私の言葉の奇々怪々さに、眉ひとつ動かさない。
「桃太郎でいうところの読者側――つまり、三次元から二次元に来てしまったと?」
「はい」
冷静に問われて肯定したものの、ある疑問がくすぶっていた。
「ということは、私たちのいるこの世界も、公子さんにとっては物語の中の世界、ですか?」
続けて淡々と尋ねられた。
その瞳は、月のない夜のように光がない。
私は口ごもる。
しかし、意を決して言った。
「それは――菊さんの説明を聞けば、その答えが得られそうなんです」
「私の説明、つまり“この世界で起きていること”、ですか?」
頷いて、不思議そうな菊を真っ直ぐに見つめる。
ラジオのノイズに紛れ、私に呼びかけた声。
その主が誰なのか。
それをどうしても、知らなければならない気がした。
「――わかりました。バトンタッチですね」
菊の手から離れ、テーブルに置かれた湯のみがコトリと音を立てた。