第4章 夢かうつつか?
私は息をのんだ。
キリリとした横顔。
手元の紙を貫く真っ直ぐな瞳。
――けれどどこか、物憂げな表情。
私はその光景に目を奪われていた。
その顔が、ふとこちらに向く。
「あ……公子さん」
菊の瞳が驚きに見ひらき、ペンを握る手がとまった。
「すっ、すみません! お邪魔でしたか?」
私は慌ててぺこぺこ頭をさげる。
「いえいえ、全くそんなことは」
「私を気にせずどうか続けて下さい、それでは――」
「あっ待って下さい、ちょうどお茶でも淹れようとしていまして……いかがですか?」
「いやっそんな気を遣わせては悪いです!」
「いえ遠慮なさらず――」
流石は日本人同士、とも言うべきか。
アルフレッドがこの場に居合わせたら「君達面倒くさいぞ!」と言うに違いない。
このままでは、互いに道を譲ろうとして、左右にフェイントをかけるようにステップし続ける状態と同じだ。
びくびくしながら、私はお言葉に甘えることにした。