第29章 for dear my imaginary blank
「――それで、最初に来た地点に行ったら、戻って来れたんです」
口をはさまれることなく、私は全てを説明し終えた。
一同は言葉が見つからないようだった。
フェリちゃんの顔を、見ることができない。
「……私がいなければ、アントーニョさんはその場にとどまって、ロヴィーノくんを探すことができたかもしれません」
「それは違うよ」
間髪入れずにフェリちゃんが言った。
その顔からは、いつものほがらかな笑みは消えている。
「危ない場所で公子ちゃんをつれ回すなんて、そんなの兄ちゃんは許さないよ」
どう返答すればいいのかわからず、私は黙りこむ。
……それも、わかるのだ。
戻るときのアントーニョの、葛藤する表情を思い出せば。
けれど、丸腰の一般人は足手まといだ。
それは変えられない事実だった。
――コン、コン
静まりかえる室内に、軽いノック音が響く。
「……あー、お邪魔するよ?」
なんとも言えない笑みのフランシスと、
「すまん、盗み聞きするつもりはなかったんだが――」
気まずげに眉をしかめるアーサーだった。