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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第29章 for dear my imaginary blank


「フェリシアーノちゃん?」

張りつめていた空気のなかに、場違いに明るい声があがった。

フェリちゃんの背後から顔を出したギルと、それからルートだった。

そのデレデレとしまりのないギルの顔が、ふと固まる。

ただならぬ部屋の様子に気づいたらしく、一瞬にして眼光が鋭くなった。

「……お前すげー汗――って……」

アントーニョに向かった言葉が途切れた。

その視線は、アントーニョの手元――銃に注がれている。

ギルの喉仏が動いたのが見えた。

「なにがあった?」

冷静でいようと必死な声音で、ルートが尋ねた。

「……はよ行かんと、ロヴィーノ、戻らんと――」

「おっ、おい!」

うわごとを呟きながら、アントーニョが部屋を出ようとする。

ギルは彼の肩をおさえ、慌ててそれを制止した。

「わかるように説明しろ! あと少し休め!」

アントーニョの手から銃を慎重に取りつつ、ギルが言い聞かせる。

「それ麻酔銃や、音も鳴るし三日は起きれんから気ぃつけよ、そうや、本物じゃなかったんや、なのに、なんで――」

「だから動くな! あぁクソ、フランシス! 手伝え!」

たまりかねてギルが叫ぶ。

アントーニョは頭をおさえてふらつきながら、なおもギルを押しのけようとしていた。

「……ねぇ、公子ちゃん、兄ちゃんになにかあったの?」

フェリちゃんの一途な瞳が懇願してくる。

偽ることを一切許さない、透きとおった瞳にまっすぐに見つめられる。

目下努力中と言っていたパスタ、それが頭に浮かんで、すぐに消えた。

残ったのは、まだ瞼の裏に焼き付いている、血だまりだった。

「――私のせいなんです」

口をついたのは、そんな言葉だった。
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