第28章 on the planned system
「危なく感じたらすぐ戻ってくるんやで!」
懇願にも似たアントーニョの声に返事もせず、ロヴィーノの姿が、とうとう建物の影に消える。
「大丈夫でしょうか……なんか具合悪そうでした」
「……」
アントーニョは唇を結んで、食い入るようにロヴィが向かった方向を見ていた。
永遠にも感じられたが、多分それは、数十秒後のことだったと思う。
――パァンッ!
甲高い銃声が、静寂を切り裂いた。
「ロヴィ!」
弾かれたようにアントーニョが走りだした。
私もほとんど無意識に駆け出していた。
街路樹を抜け、街灯を横切り、ロヴィがいる角を曲がる。
「大丈夫かロヴィ――」
そこで広がっていた光景に、私たちは凍りついた。
指先まで固まり、喉も口もひきつって動けない。
アントーニョの目が見開かれていた。
拒絶と恐怖に瞳孔が震えている。
――多分、私も同じだろう。
立ちすくむ二人の眼前には、血の海が横たわっていた。