第28章 on the planned system
「今、向こうで影が動いた」
ロヴィーノが小声で囁いた。
その指先は、少し離れた建物の影をさしている。
「誰かいるってことか?」
アントーニョの問いに、ロヴィーノは頷いた。
その顔面は蒼白としていた。
乗り物酔いしたような、血の気がなく、呼吸も浅いように見える。
焦点も虚ろで定まっていない。
弱く上下する肩を目にして、どうしたのかと声をかけようとするが、既に彼の足は踏み出されていた。
「ちょっちょっと待てロヴィ!」
「お前はそこで公子を見てろ!」
「う……っ」
アントーニョが言葉を詰まらせた。
ロヴィーノとアントーニョの二人が行けば、私は一人になる。
かといって、未知の危険の中に私を連れて行く、という選択肢も、彼らにはとれないのだろう。
そして丸腰一般人の私は、足でまといになるに違いない。
アントーニョを一瞥して、ロヴィーノが静かに歩き出した。