第27章 By the turning point
「公子!」
うしろから呼びかけられる。
振り返ると、アルが満面の笑みで抱きついてきた。
「ありがとう公子! 君のおかげで新しくわかったことがあるんだ!」
「え……?」
その言葉を耳にした瞬間、体が固まる。
呼吸も、瞬きさえも止まる。
聞き覚えがあった。
誰かに言われた覚えがあった。
『俺は予言する――』
「公子? どうしたんだい?」
アルの声も、よく聞こえなかった。
ギルを信じられない気持ちで見る。
――彼の“予言”は当たった。
エリザとたわむれている彼は、一体どういう意味であんなことを言ったんだろうか。
「おーい、公子ったら聞こえてるのかい?」
「ひゃ、ひゃふ!?」
呆然としていると、アルに頬を横に引っ張られた。
さっきといい今といい、欧米式の挨拶にはどうも慣れない。
アーサーもやってきて、消失点を使ったことをガミガミ怒られた。
「心配させんな!」とツンもなにもない直球のデレに、深く反省する。
今後は非常事態以外、消失点を使わないことを約束した。
やがてフランシス、アントーニョ、菊、などの面々も寄ってきて、戻っていた間のことを根掘り葉掘り尋ねられた。
私の無事(?)を確認したのか、今度はこちらが説明される番になった。
紙の資料を渡されたのだが、さっぱり理解できない。
波動関数やら、因果的閉鎖性やら、小難しい理系単語が飛び交っていた。
菊の熱心な説明を愛想笑いで受け流すのが心苦しかった。
わかったことといえば、量子論が本格的に関わってきている、ということくらいだ。
これは量子テレポーテーション説が濃厚になってきたかもしれない。