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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第27章 By the turning point


「君はヒーローなんじゃないかい? いやそしたらヒーローが俺とふたりに――」

アルの壮大な悩みを耳にしていると、またもや肩をガシッと掴まれる。

目を輝かせているアルだ。

無邪気そのものの、一切の曇りのない瞳で、私を正面から見つめている。

「異変解決のために、俺に協力してくれ!」

「お、れ、た、ち、だバカ!」

横からアーサーが怒鳴った。

しかしそれを完璧にスルーして、アルは肩から手を離す。

そしてその手を、私に差しだした。

彼は自信満々で、異論は認めないぞ! という笑顔を見せている。

少し離れたところでは、菊が少し申し訳なさそうな微笑を口元に浮かべて、こちらを見ていた。

「もし迷惑でなければ……」そんな言葉が聞こえるようだった。

会場を見渡すと、みな違う動作をしながらも、私に目を向けている。

私の答えを期待して、それを見届けようとしている。

エリザに踏まれているギルも、私に目をやっていた。

「答えはもう決まってんだろ?」そんなふうに言っている顔だ。

「俺たちと一緒に、異変を解決しようじゃないか!」

アルが高らかに言った。

――そうだ。答えなんて、もう決まっている。

私は、アルの手を取る。

「はい!」

瞬間、その手から光が溢れ出した。

立ち昇る光は雪のようで、あたたかな色彩をまとって、私の脳を揺らす。

アルは一瞬驚きの表情を見せたあと、すぐに、いつもの恐れを知らない笑顔を見せた。

手の感覚が、会場の風景が、あやふやになっていく。

なにか言われたような気がするが、それさえもわからない程、意識が不明瞭になっていく。

瞬く間に視界が光に溺れて、残った意識を総動員してアルの手を離した。

「君を待ってる!」

その声を最後に、私の意識は光にのみ込まれた。
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