第27章 By the turning point
その声が駆け寄ってきて、私はばふっと抱きつかれた。
両肩をガシッと掴まれる。
エリザは鬼気迫る顔で問い詰めてきた。
「こいつになにもされなかった!?」
「う、うん何事もな――」
「本当に? 隠さなくていいのよ!」
「本当に大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
そう言うと、ようやくエリザは納得してくれたようだ。
ホッと息をつくと、疑わしい目でキッとギルを睨みつける。
「なっなんもしてねぇって!」とギルがうろたえていた。
まわりを見ると、どうやら世界会議場のようだ。
大体のメンバーが机に揃っている。
私がトリップしたのは、広い会議場の目立たないすみっこ。
会議が行われていたということは、ここを離れてからどれくらい時間が経ったのだろうか?
こちらに寄ってくる顔ぶれを見ていると、ふとイヴァンと目が合う。
彼は恐ろしいほどにこやかな笑みを浮かべて、手元にある携帯機器のどこかを押した。
すると、会場にあるスピーカーが「ジーッ、ジー」とノイズを奏でる。
やがてそれは、
『……ま、また本棚でも倒れて……』
という、聞き覚えのある声を流した。
会場の面々がなにごとかとスピーカーに目をやる。
『……ど、どいて……ください』
それは少女の声だった。
恐怖にひきつり、叫び出したいのを必死に抑えている。
嫌な予感がした。
……この声って、私じゃない?
ギシ、と床が軋む音が入る。
息をのむ、しゃくりあげるような小さな悲鳴がする。
『やめて――っ!』
ブツッ
悲愴な絶叫が乱暴に切断される。
あとに残ったのは、ノイズ混じりの停止音。
会場は、水を打ったように静まり返っていた。