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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第26章 電波塔クラスレート


質問の意図がわからず、私は首をひねる。

“後悔”。

その言葉を、ギルは重く口にしていた。

――まるで自分が、後悔しているかのように。

「向こうの世界に行ったこと、だ」

トリップのことを指しているらしい。

ギルは視線を私から、また空に戻す。

それから私の返答を待たずに続けた。

「“異変”とかいう妙な騒ぎに巻き込まれるわ、自分で行き来できないわ、なーんもいいことねぇじゃんか。そういやイヴァンの野郎にも絡まれてたしよ」

ギルは語尾を小さくしぼませながら、道路の石を蹴る。

乾いた音が夜闇に響いた。

小石は道路の脇に転がっていき、やがて公園を囲む壁にぶつかって止まった。

公園――思ったより、たくさん歩いてきたようだ。

「それに言っただろ? どんな危険があるかわからねぇ。
ひょっとしたら、“戻れなくなる”ことだってあるかもしれない」

「……」

たしかに、その可能性もある。

今まで、戻れたのも、浦島太郎にならなかったのも、ただの“幸運”なのかもしれない。

異変と関わって、無傷でいられるのも、ただの“幸運”なのかもしれない。

なにも、確固たる真実を、私は手にしていない。

ギルの瞳が降りてくる。

月を背景にした表情は、悲しそうでも、不安そうでもなかった。

ただ真面目で、本気だった。

「お前は、俺に出会ったことを後悔してないのか?」
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