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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第25章 雨の中へ


表紙を見ると、やはりというべきか、科学系の事典だった。

背表紙にひっくり返し、索引から開いてみる。

アインシュタイン、ガリレオ、ニュートン――

誰でも知っているような名前が、流し読みをしていた目にも引っかかった。

他にも長岡半太郎、本多光太郎といった、日本史に出てきた名前もある。

けれど――

「……ない」

“アッペルフェルドの猫”も。

その提唱者“ハインリヒ・アッペルフェルド”も。

いくら注意深く読んでも、索引から見つけられない。

かわりに、そして容易に見つかるのは“シュレディンガーの猫”。

その思考実験の提唱者、“エルヴィン・シュレディンガー”。

……どういうことなんだろうか。

同じ“箱の中の半死半生の猫”を扱っているはずなのに。

こちらの世界では、エルヴィン・シュレディンガーによる、“シュレディンガーの猫”。

ギルたちの世界では、ハインリヒ・アッペルフェルドによる、“アッペルフェルドの猫”。

なぜこうも違うんだ?

ギルの方を見ても、文字を追うことに熱中していて、こちらをちらとも見ない。

ため息をつきたい気持ちで、今度は人物事典を手にとった。

うむ、フォート氏がいる。

以前調べ、またアルに伝えたとおり。

“超常現象研究の先駆者”が、口ひげをたくわえて、いかめしい顔をしていた。

多分、ギルたちの世界の事典には、載っていないのだろう。

この違いになんの意味があり、どんな影響があるのか、まだわからない。

もしかしたら。

私たちの世界にはいない、私たちの世界には欠けている、“誰か”が――

彼らの世界には――……

…………

……
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