第25章 雨の中へ
ギルがたどり着いたのは、百科事典が揃う棚だった。
掌を広げたくらいの幅がある事典、B5ノートを2冊ほど並べた大きさの事典、などなど。
大小厚さ様々の背表紙が、ときおり段をなして整列していた。
ギルはざっとそれらを眺め、何冊かをひょいと取りだす。
抱えられた事典たちは、見るからに重量感があった。
「持ちますよ」
「俺様の腕力は公子に頼るほど貧しくねぇ」
……そうですか。
よくわからない強がりとともに、私たちは席についた。
机に事典を積むと、なかなかの壮観だった。
ざっと8冊くらいだろうか。
はたから見れば「こいつなに調べてんだよ」なかんじだと思う。
1番上に積まれた事典を手にとり、ギルはすぐ読み始めた。
真剣な目線がページに注がれている。
……あー、だめだ。このままじゃ、いつかのように放置されてしまう――
「あの、私にもなにか手伝わせてください」
、、、、
「いや、あっち側の俺にしかわからないことだから、適当に暇つぶしてろ」
つまり異世界人にはわからんから黙ってろと? ってここじゃギルが異世界人じゃね? あれ?
「なんなら俺様の肩もみでもして――」
「それは嫌です」
「即答かよ!」
不満げなギルを無視して、仕方なく1番近い事典を引っ張り出した。