第25章 雨の中へ
心配事はそれだけではない。
――時刻が、昼過ぎだった。
トリップしたのは23時頃。
つまり、12時間という、半日以上の時がすぎていたのだ。
長くなっている気がするし、今後どうなっていくのかも不安だ。
少なくとも1回は、ギルを“触れているもの”として、向こうに帰さなければならないのだし。
このギルの様子じゃ、図書館に長居しそうだ。
家に誰もいないうちにギルを帰したい。
彼と、彼らの世界に協力したいが、私にも私の世界がある。
……なんだか、家庭と仕事に挟まれたサラリーマンの気分だ。
そうこうしていると、図書館についた。
せまい閲覧スペースに目をやるが、人影はない。
しめたとばかりに荷物を置く。
雨が降りそうな空模様のため、傘とレインコートを持ってきたのだ。
レインコートはもちろんギル隠蔽も兼ねている。
「あの、あまりあっちこっち飛び回らないでくださ――ってちょっと!?」
振り返るとギルはもう、あらぬ方向へとスタスタ歩きだしていた。
慌ててあとを追う。
いきなり先行きが不安になることを……