第3章 月夜にて
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「……くっくっく」
本田家の庭に、不気味な笑い声が響いた。
満月の煌めきを受け、その影が揺れる。
アーサー・カークランド。
それが、この不法侵入者の名前である。
「……くっくっく」
もう一度、彼は不気味な笑い声を響かせた。
その姿はまさに、いたずらを発動しようとする子どもだ。
アーサーが普通に玄関から訪問しないのには、ふたつ理由がある。
ひとつ、アルフレッドである。
用事を済ますだけ済まし、余りにあっさりと帰っていった(約45秒)のが、アーサーには非常に気に入らなかった。
ふたつ、フランシスである。
例のごとく喧嘩腰で話しかけたが、『ごめん今忙しいから』の僅かたったの12文字であしらわれてしまったのだ。
これもまた、アーサーには非常に気に入らなかった。
「ったく、揃いも揃ってよぉ……」
フランシスは、まぁわかる。
最近の仕事量は、さすがに同情を覚えるレベルだ。
しかし一方、アルフレッドである。
彼は最近、なにやらマシューとコソコソと動いている。
そのせいか付き合いが悪い。
一体なにを企んでいるのか。
無論、アーサーはなにも聞かされていなかった。