第3章 月夜にて
「もう今日は終わりでいいんじゃねーあるか?」
「いえ、もう少し粘ります」
「自分で言っといてアレあるが、疑いを持ち始めたあるよ……」
自信なさげに呟き、耀はしょぼんと眉を下げた。
間違っていたら、ただの徒労に終わる。
それを怖れているのだ。
菊にも確信があるわけではなかった。
けれど、忘れたわけでもなかった。
『消失点の電磁波を計測したら、おかしなことが起きてたある!』
嬉しそうな耀から聞かされたとき。
なにかがピタリとはまったような。
パズルのピースが手には入ったような。
あの感覚を、菊はまだ信じていたかった。
「自信を持って下さい、必ず意味があるはずです。私はまだ諦めません」
「そうあるか。……仕方ねーが、我ももう少し付き合うあるよ」
「ありがとうございます」
菊は微苦笑しつつ、書類に注意を戻した。
「……夜食作ってくるある」
と、ふらふら耀が台所に行ったのは、それからしばらくあとのことだった。
耀がいない間、菊は公子の様子を見に行くことにした。