第24章 下位互換カソード
「アル、僕思ったんだけど公子さんって――」
ふいに、マシューを遮るパタパタとした足音が聞こえてきた。
誰かと思い、2人が音のほうに視線を向けると、
「……あら? お2人さんじゃない」
廊下を歩いていたのは、エリザだった。
エリザは2人のテーブルに歩み寄り、
「これをどこかで見なかったかしら?」
と言って、右手に持っていた携帯から写真を見せた。
そこには一円玉大ほどのボタンが写っていた。
灰色で穴は2つ、縁にちょっとした模様のついた、可愛らしいボタンだ。
「公子ちゃんのものなんだけれど、1つ取れてどこかに落としちゃったみたいなのよ」
困った顔で眉をさげ、エリザは再度「見かけなかった?」と尋ねる。
写真を見ると、1番下のボタンがなくなっているようだった。
2人はしばし記憶をたぐるが、思い当たるものはなく首を左右に振る。
エリザは残念そうに「そう……」と言った。
「俺も探すの手伝うよ!」
「ありがとう。でも菊さんが手伝ってくれてるから大丈夫よ」
やわらかくエリザは微笑み、
「それに、なにやらお取り込み中のようだから」
と、書類に目配せした。
そう言われ「あはは~」と弱ったようにマシューは笑う。
エリザも穏やかに「うふふ」などと口元に手を添え、優雅に微笑していた。
そのなんだかよくわからないほほえみ空間がひろがっていると、
『USA! USA! U! S! Aーーッ!!』
けたたましい騒音を轟かせ、アルの携帯が着信を知らせた。