第24章 下位互換カソード
「フォート氏って、さっき話してた人のこと?」
アルは頷く。
「チャールズ・ホイ・フォート。アメリカにおける超常現象研究の先駆者――って公子は言ってたけど」
「調べたけど見つからなかったんだっけ? そんな名前僕も聞いたことないよ」
「俺もだぞ。けど彼女が嘘をついてるようには見えなかったし……」
マシューが違う書類を見ながら言う。
「フォート氏が起爆剤となって急激に研究が進んだ……という話らしいけど、実際のところ研究の進みはゆっくりだったしね。
なにより“フォート氏”のような、象徴的な研究者はいなかった」
「見つかるのは細々した研究者ばっかりなんだぞ」
「うーん……そもそも、超常現象関係の有名人でアルが知らないなら、その存在さえ僕には疑わしいんだけど」
「もしかしたら、君みたいに影のうっすーい人物だったんじゃないかい?」
マシューがゆるく丸めた紙でアルの頭をこづいた。
ごめんごめん~と笑うアル。
マシューはひとつため息を吐いて、当然の疑問を口にした。
「公子さんの世界と僕たちの世界は、歴史とかがかなり違ってるのかもよ?」
「俺もそう思って菊に聞いてみたんだ。それで菊が言うには、ほぼ同じらしい」
「なんで?」
マシューが首を傾げる。
アルは腕をあげ、肩をすくめてみせた。
「わかんない」
「えぇっ!?」
「『オタクの勘ですっ!』」
アルは突然奇声をあげ、腕をシュビッ! と交差させ謎のポーズをとる。
そして数秒後憑き物が落ちたようにポーズをとき、真顔で言った。
「――って言われたんだ」
「あぁ……」
マシューはなにかを察したようにそう声をもらした。