第23章 消失のための再帰点より
そう言った瞬間、体がふわりと浮いた気がした。
重力が弱まったような、不思議な感覚に浸される。
と同時に、見慣れたきらきらした粒が自分の体から立ち昇りはじめた。
室内の風景がすり硝子越しになり、酩酊感が頭を揺らす。
――これは、"戻ってる"のか……
ゴーストタウンのことを伝える、その目的は果たせた。
だから、彼らと顔を合わせるのはこれで最後。
そしてもう、二度とない。
そう思うと、なんだか泣きたくなるような、それでいて安堵するような感情が胸に広がっていく。
『異常なエネルギー値』
アルの言葉が蘇る。
――“私”は、この世界に来てはいけなかったのかもしれない――……
「公子っ!」
全てがぼやけた世界に、クリアなものが現れた。
腕を掴む手。
呼ぶ声。
――振りほどかな、きゃ……
わけもなくよぎる衝動も、必死な赤い瞳も、全てがのみこまれた。