第3章 月夜にて
「……それにしても、この書類。片づきませんね……」
「もう疲れたある……」
二人のため息が重なった。
菊の手もとの紙は、数字でびっしりと埋め尽くされている。
しかももうすぐ、英国から更なる書類の束が現れるだろう。
目の疲労も相まって、菊はうんざりとこめかみをおさえた。
「“消失点”と“電磁波”の関係性、か……」
菊が紙に視線を戻すと、向こうの部屋から歓声が聞こえてきた。
「よしっ! 香がバツゲームなんだぜ!」
「うるさいよ……本当にうるさい」
「さーてなにをさせてあげようかネー」
「――もう一生お前らと大富豪はやらないと誓った的な」
「……あいつら、なんのために集まったのかわかってねーあるよ」
「まあまあ」
菊は無難な返事をしながら、なおも、年寄りを働かせていい度胸してるある、と頬を膨らます耀をなだめた。