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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第23章 消失のための再帰点より


私が指さしたのは、

「RF音響効果?」

そんな単語だった。

内容はというと、電磁波が脳に直接作用し、行動の中断や失神を引き起こす、というものだ。

すでに動物実験で確認されているが、電磁波の強さが安全基準をこえてしまうらしい。

「電磁波が行動を左右するとか、マンガみたいだよね」

フランシスの言葉に頷きながら、ふと思い出したようにアントーニョが言う。

「こういう話もあるで。
アメリカで、めっちゃ太った女の人が食欲を減らすため、脳に“食欲減らしや~!”ってプログラムした、電極を埋めこむ手術をしたんやて」

なんつーアメリカンなダイナミックなダイエット(物理)を……

「頭蓋開いたのな」

「そういうこと言わないで下さい!」

ギルをたしなめるが、ケセセセと笑われただけだった。

「結果は?」

フランシスがうながす。

「成功。食欲はびっくりするくらいなくなって、体重も落ちて、今や食事は栄養補給みたいな、義務的なもんになったんやて」

ギルがヒューと口笛を吹く。

すごいと思うが、副作用とか大丈夫なのだろうか。

案の定、明るい親分の笑顔に影がさす(笑顔のまま)。

「けどな、手術前の彼女は明るくて活発な人柄やったのに、手術後は1日中テレビの前で、ぼーっとしてるようになってもうた」

「えええっ!?」

「女の人には娘がいてな、ずっと手術に反対しとってん。しかも電極は、手術後もオンオフできるんや。当然オフにして、何もなかったにしようと思うやろ? せやけど女の人はオフにしないねん」

「人格が変わっちまったのか」

「つまりそういうことやな」

アントーニョが重々しく頷いた。

その唇が一旦とじたあと、ゆっくりひらく。

「さらに恐ろしいことはな、この手術を受けたのは3人なんや。けど、成功例としてメディアにでたのは彼女だけ」

「成功、ねぇ」

フランシスが皮肉っぽい笑みを浮かべる。

「……他の2人はどうなったんやろな?」

空気がず~んと重くなる。

アントーニョの言い方に、その悲劇を囁くような声色に、私たち3人は黙り込んだ。
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