第23章 消失のための再帰点より
「別に派手に対立してるわけじゃねぇ。ただ怖がってるだけだ」
……怖がってる?
「自国の不利益にならないか、つまり――“異変”に、だ」
真面目な表情でギルが言う。
フランシスも腕を組み、思案げな表情で頷いた。
「一人で立ち向かうには余りにデカい問題だ。特別なことじゃない、利益も不利益も誰かと共有する方がいい。
共有なんて言葉はいいが、つまるところリスク分散。
だから近しい者で組み、周りを固め、少しでも他に先んじようとする」
ギルがまくし立てる。
「それに“敵”っつうモン作った方が団結は強くなる。ましてや、この異変の原因である“真の敵”がなんなのかわかんねぇ現状じゃな」
「アルフレッドとイヴァンのとこなんて冷戦一歩手前やで~」
「んなのあの二人だけでしょ!」
それは……バルトの三人が非常においたわしいな……。
フランシスのうんざりした様子から、彼もとばっちりを受けているとみえる。
「それにな、俺が思うにあいつら皆なんらかの――“秘密”を隠し持ってる」
真剣そのものの、どこか確信めいた響きがある声でギルは言う。
神妙な面もちは、なにかに考えを巡らせていた。
ありそうではあるが、“秘密”と漠然としていて私は思わず尋ねる。
「秘密といいますと?」
「それがわかんねーから秘密なんだろ!」
怒られてしまった。