第23章 消失のための再帰点より
どうやらここがテレポート先らしい。
本を保管する小さな物置のようで、テレポートする前の(取り壊し予定の)棟の一室とあまり変わらない気がした。
扉を出ないとわからないが、図書館にある第○書庫、みたいなものだろうか。
ギルは、同じく倒れて床にへばっていたフランシスにも手をかしていた。
おそらく、部屋が狭いゆえに再帰点が近く、互いにぶつかってバランスを崩したのだろう。
互いが互いに突然現れたに等しい状況だ。
さらに立てかけてあったはしごにも衝突して、この有様だといえる。
「あ、ありがとうございます、すみません」
「ん? あぁ。怪我ねぇか」
「ありません、むしろあなたの方が怪我を――」
「大丈夫だっつの。なにせこの俺様だからなっ!」
そして例のごとく高笑いするギル。
これは……かなり無理をなされてるな。
私はごくごく弱く、ひよこをつつくような力で、ギルの頭に人差し指をツンと当てた。
途端ギルはその部分を手でおさえ、犬歯をむき出しにキレ顔で私を睨みつける。
それどころか、瞳がうっすら潤んでいるではないか。
本当に申し訳ない心地でいると、
「初テレポーテーションがこんなところなんてねぇ」
頭をかきながら、やれやれとした口調でフランシスが言った。