第22章 依然重複領域外に
具体的に番地を示せとまでは言わない。
が、そんな抽象的な説明をされてもサッパリわからない。
教えるつもりがないのだと判断して、私は次の質問をした。
「どうして私だけがここに来れるの?」
「僕が君を一番大切に思ってるからだよ」
「……はぁ」
眩しい、もはや怪しい域に達している微笑でさらっとそんなことを言われる。
普通の乙女なら顔を赤らめたりするのだろう。
だが私はひたすら「えええ」と困惑の真っ最中にいた。
見ず知らずの人の好感度MAXって主人公補正なの? そうなの?
「……えぇと、あなたは何者なんでしょうか」
「知りたい?」
「……いや、まぁ」
「えぇ……そこは普通『うん』って言うところだと思うんだけど」
「あぁ……はい……」
非常識な道を突っ走っている目の前の人物に“普通”を語られたことや、人懐っこい苦笑いや頬をかく仕草。
初めてイオンとあいまみえたとき。
絵画的な、無機質なほどに整った容貌は、飄々として冷たい印象を与えていた。
しかし目の前の彼からは、純粋であたたかな優しさを感じる。
ただ、初めて会ったときからずっと感じていた雰囲気は、まだ続いていた。
儚げで近寄りがたくて――そしてどこか、仄暗い。
……結局なにもわからなかったな。