第22章 依然重複領域外に
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消失点に巻き込まれたあと、私は再びあの場所に来ていた。
誰もいない、時間が凍りついたような、一瞬を切り取って絵にしたような場所。
死んだゴーストタウンに、私は立っていた。
空は無邪気なほどに純白に曇っていて、昼か夕かもわからない。
車も自転車も走っておらず、建物は無人だ。
実に“ゴーストタウン”の名に相応しい光景である。
霧でも漂わせば、ホラーゲームの舞台がいっちょあがりだ。
寒さを感じるかどうかギリギリの涼しい風だけが、生きて動いている。
それ以外なにも動いていない。
違和感を覚えるほどの停滞が、そこにあった。
「やぁ、また会ったね」
「っっ!?」
背後から唐突に声をかけられ、びくっとして振り返る。
が、予想に反し誰もいない。
「こっちだよ」
「わぎゃああぁっ!?」
さらに背後から肩を叩かれ私は飛び上がった。
それほどまでに驚いたのだ。
振り向き声の主を見れば、いつだかのイケメンがややびっくりしたように瞳をひらいていた。
「ごめん、驚かすつもりはなかったんだけど」
頭をかいて困ったように笑む……たしかイオンさん。
透きとおった心地のいい声に聞き覚えがある。
深海を湛えた黒瞳も、二次元からそのまま飛び出してきたような瑠璃色の髪も、見覚えがあった。
……とはいっても、名前しか正体知らないんだが……
「いやいやマジびっくりしたって」
「いい叫び声だったね」
「……言いたいことはそれだけか?」
「ごっごめんごめん! でもアレ君らしくてとっても可愛かったよ」
それ嬉しくないしアレ呼ばわりすんなや、などと思いながら、周りをそれとなく見渡す。
焦ったように微笑んでいたイオンは、その屈託ない微笑をまた違ったものに変容させた。
どこまでも見通しているような眼差しが、私の視線を追いかける。
「残念だけど、“彼”はいないよ」
「――っ」