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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第22章 依然重複領域外に





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

消失点に巻き込まれたあと、私は再びあの場所に来ていた。

誰もいない、時間が凍りついたような、一瞬を切り取って絵にしたような場所。

死んだゴーストタウンに、私は立っていた。

空は無邪気なほどに純白に曇っていて、昼か夕かもわからない。

車も自転車も走っておらず、建物は無人だ。

実に“ゴーストタウン”の名に相応しい光景である。

霧でも漂わせば、ホラーゲームの舞台がいっちょあがりだ。

寒さを感じるかどうかギリギリの涼しい風だけが、生きて動いている。

それ以外なにも動いていない。

違和感を覚えるほどの停滞が、そこにあった。

「やぁ、また会ったね」

「っっ!?」

背後から唐突に声をかけられ、びくっとして振り返る。

が、予想に反し誰もいない。

「こっちだよ」

「わぎゃああぁっ!?」

さらに背後から肩を叩かれ私は飛び上がった。

それほどまでに驚いたのだ。

振り向き声の主を見れば、いつだかのイケメンがややびっくりしたように瞳をひらいていた。

「ごめん、驚かすつもりはなかったんだけど」

頭をかいて困ったように笑む……たしかイオンさん。

透きとおった心地のいい声に聞き覚えがある。

深海を湛えた黒瞳も、二次元からそのまま飛び出してきたような瑠璃色の髪も、見覚えがあった。

……とはいっても、名前しか正体知らないんだが……

「いやいやマジびっくりしたって」

「いい叫び声だったね」

「……言いたいことはそれだけか?」

「ごっごめんごめん! でもアレ君らしくてとっても可愛かったよ」

それ嬉しくないしアレ呼ばわりすんなや、などと思いながら、周りをそれとなく見渡す。

焦ったように微笑んでいたイオンは、その屈託ない微笑をまた違ったものに変容させた。

どこまでも見通しているような眼差しが、私の視線を追いかける。

「残念だけど、“彼”はいないよ」

「――っ」
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