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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第22章 依然重複領域外に


耀の背後に向かって唐突にイヴァンが呼びかけた。

ハッと耀が振り返ると、柱の影から湾が蒼白な顔を出していた。

首を俯きがちにして、視線は地面に落とされている。

「湾!」

耀が慌てて駆け寄る。

「なんで来たあるか!?」

怒りさえ含んだ耀の声が降りかかり、湾はゆっくりと顔をあげた。

彼女は申し訳なさそうに眉を歪め、唇を噛んでいる。

その唇が、静かに言葉を紡ぎだした。

「老師が心配で……」

「なに馬鹿なこと言ってるある! 遠ざけるために我は――」

「……ごめんなさい」

弱々しく呟いて、湾は再びうなだれた。

耀は怪訝に思い、そっと湾の顔を覗きこむ。

「私が、もう少し……もっと早く二人のところに行っていたら――二人のことをみんなに伝えていたら……」

湾の声は今にも泣き出しそうにかすれていた。

携帯を握りしめた右手が、かすかに震えている。

彼女は、香とヨンスが消えた際の自分の行動に負い目を感じているのだ。

耀や菊が違うと諌めても、湾の中の自責の念はまだ消えていない。

耀はいくらか眉をしかめたまま、ため息を吐いた。

そして湾の頭に手をぽんと乗せて、

「湾が気に病むことなんかなにもないあるよ。何度も言わせんなある」

と言い聞かせるような口調で言った。

「大変なことになってるみたいだね~」

くすくす笑いながらイヴァンが耀に歩み寄る。

耀はすぐさま湾を背中でかばうようにして、イヴァンに向き直った。

その瞳は一層強くイヴァンを見据えている。
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