第22章 依然重複領域外に
「一週間前から、ヨンスと香と連絡が取れないある」
ひとけのない駐車場に、耀の冷徹な声が響いた。
機械的な声色と凍りついた無表情は、イヴァンが見たことのないものだった。
向かい合う二人の他に、あたりには誰もいない。
駐車してある車も少なく、遮蔽物はないに等しい。
そんながらんとしたコンクリートの上で、イヴァンはいつもとかわらぬ笑みを浮かべていた。
「ふーん、そうなんだ」
「とぼけんなある。二人をどうしたあるか?」
怒気を押し殺した黒瞳で、耀はイヴァンを睨みあげる。
イヴァンは首をこくっと傾げた。
「なんのこと?」
「それはお前が一番わかってるんじゃないあるか」
「全然わからないなあ」
「お前……」
耀が歯軋りする。
イヴァンに見下ろされる形となっているが、今にも胸ぐらを掴まんばかりの勢いだ。
そんな耀に、イヴァンは表情を微塵も変えずに言う。
「なんで僕にそんなこと聞くの? それともわざわざ呼び出してまで“僕”に聞くような後ろめたい理由でもあるの?」
「……っ!」
全く笑っていない紫色の瞳が、笑みに細められた奥からじっと耀を凝視していた。
耀は息をつまらせる。
それは無論心当たりがあるからだ。
――クラッキングがバレている?
よぎる予感に耀はかぶりを振る。
そんなはずない、あれは完璧に遂行されていた――
「ねぇ、そこの柱に隠れてる子出てきなよ?」
「っ!?」