第21章 乖離する声を
我に返ったルートが追おうとするが、それより先にギルの体躯が翻る。
ドアすぐそば、空の本棚の枠へ躍るようなステップで足をひっかけるギル。
支点に力が加わったのか、たやすく骨組みの棚がバランスをくずす。
それは2つ3つの棚を巻き込み、ギルのいる扉に倒れ――
「兄さんっ!!」
――る前に、重力が軽くなったような身のこなしで、ギルが扉から廊下に転がり出た。
ガラガラと音を立て、本棚の入り組んだ骨組みが扉の前に立ち塞がる。
「そんな腑抜けたマネを教えた覚えはないぜ!」
ケセセセ! と扉の外で高らかにギルが笑い、私と悪友3人は走り出す。
「あの、ちょっとお聞きしたいんですが――」
「さっすがギルちゃんや!」
「持つべきものは友だねぇ」
「ケッ……ケセセセ! かっこよすぎる友を持ったことを誇るといいぜ!」
あまりに嬉しそうなギルの話の腰を折ることに気が引けて、私はしゅんと黙りこんだ。
ッダーン!
大音響に空間が震える。
本棚を片づけ(物理)て、ルートがもう扉からゆらりと姿を出していた。
その俯いた瞳に、銃の照準のような赤い光点が走る。
肌が粟立った瞬間、弾丸となってルートはこちらへ駆け出た。
髪が煽られるような、ブワッ! と威圧感の波が押し寄せる。
凄まじいプレッシャー。
「うわヤベ」
「ちょっと大丈夫なの!?」
笑みを崩さぬまま、ギルは冷や汗を垂らす。
フランシスも焦りの滲んだ情けない声で騒ぐ。