第21章 乖離する声を
ルートだけでなく、菊やフェリちゃんも顔を出したのが見えた。
ルートが追いつくまでのカウントダウンは0に近い。
と、一番先頭、数歩先を走っていたギルが廊下の十字路にさしかかった瞬間――
ギルの姿がフッと掻き消えた。
いや、光の粒子を放ち、まわりの風景を歪めていなくなったのだ。
「なっ、ギル!?」
「……フランシス、あれきっと消失点や! 飛び込めえっ!」
「ええええ!?」
激しく嫌そうに叫ぶ間もなく、2番目を走っていたフランシスも同じように消える。
これは――どう見てもテレポートじゃないか!?
アーサーも扉から姿を現した。
テレポートを見ていたのか、その瞳に戦慄が映っている。
怒りと懇願が混ざった表情で、口が「やめろ」と動いたのが見えた。
「待ってください、これ危な――」
「ほななクソ眉毛!」
私の話も聞かず、アントーニョは消失点の十字路へ踏みだした。
途端視界が反転、グラッと傾き縦も横もめちゃくちゃになりだす。
粒のような、波のような光の先に、決死の形相でなにかを叫ぶアーサーが見える。
私を抱えているアントーニョの腕も、古い建物の匂いも、髪をすり抜けていた風も、なにも感じられなくなっていく。
「やめろ――!!」
最後に、悲鳴にも似たアーサーの絶叫が聞こえた。