第21章 乖離する声を
混乱しすぎているのか、言ってることがよくわからない。
「ドッペルゲンガーだよ! 知らないの?」
「いや、知ってるがなんの関係があ――」
「コピーの俺たちが自分がオリジナルになるためにオリジナルの俺たちを消そうとやってくるんだよっ!!」
真剣そのものでフェリちゃんががなり立てる。
ルートはわけがわからないというように困り果てていた。
アーサーはなんだか名状しがたいすごい顔をしているし、菊は……真顔で私と同じようにピンクレモネードをすすっていた。
湯のみな持ち方おもしろいからやめてほしい。
「なにを勘違いしているか知らないが、量子テレポーテーションはあくまで可能性の話だ。
だいたいカップ一杯の水でさえテレポートできるよう量子化する――情報をスキャンするのに、宇宙の年齢の何倍もの時間をかけた処理が必要なんだ。
それに熱的に絶縁された真空中でなければできな――」
「やだよぉお! 俺消されるなんてやだっ!!」
……ははぁ、どうやら
あのとき確かにテレポートした
↓
ルートの考えが間違ってるはずがない
↓
てことは俺たちはコピーなの?
↓
そんなわけない!(←なぜかここで確信)
↓
それじゃ別にコピーがいるんだ。(なぜなら俺たちはオリジナルだから←なぜか確定事項)
↓
そっくりさんといえばドッペルゲンガーだ!
↓
消される怖いよ助けてルート!
葛藤が限界を越えて、思考が超展開したらしい。
「あの、落ち着いて――」
「公子ちゃん聞こえるでしょ!? 足音が近づいてくる!」
切羽詰まった青い顔でフェリちゃんが短く叫んだ。
まさか意識障害?
なんて思っていると
――廊下を歩く音が、聞こえた。