第20章 追跡先へ
「磁気嵐とは、地球の磁気が異常な変化をすることです。
太陽面爆発により、めちゃくちゃな磁場が地球に吹きつけることが原因です」
「太陽の表面で爆発が起きて、それによって生まれためちゃくちゃな磁場が地球に届いて、巻き込まれた地球の磁気がおかしくなっちゃう……ということですか?」
地球いい迷惑だなおい。
「この磁気嵐のおもな影響はオーロラの発生などなんですが、自動車事故の発生率を高めたり、超低周波音を生じさせる、という研究データがあるんです」
「超低周波音?」
「その名の通り周波数の低い音波のことです。健康被害があり、実際に公害などとして存在しています。
新幹線等の鉄道トンネルの出口や、ボイラーから発生します」
頷きつつフェリちゃんからグラスを受け取った。
なぜかさっきと違ってピンク色の液体が入っている。
ややギョッとして尋ねると「ピンクレモネードあるの思い出したんだ~」と答えられた。マジでどこから出してるの?
「さらに地球の磁場と心臓病に関連がある、というデータを見つけました」
心臓病、と言われると心臓発作しか思いつかない。
「磁場は水分子を変化させる性質があります。これが何を意味するかおわかりになりますか?」
おわかり頂けただろうか……なホラー口調で菊が言った。
グラスに口をつけようとした手がとまり、私は首を左右にふる。
嫌な考えが浮かんだ。
人間の体って、たしか60%が水分でできて――
「血管の浸透性に影響を及ぼすのです」
「血管の、浸透性」
なんかそれ、すごくヤバい気がするんだけど……
「このように密接な関わりが存在するわけです。
ここから、電磁波が意識障害を引き起こすメカニズムが解明できそうなんです。ですからお礼を申し上げたくて」
「いっいえ私はなにも――」
私と菊が遠慮合戦を繰り広げていると、
「よしっじゃあ俺の番だな!」
アーサーが高らかに声をあげ、両方の合戦の旗を打ち下ろした。
そして半ば強引に、アーサーの独壇場の幕が切って落とされたのだった。