第20章 追跡先へ
「量子テレポーテーションの流れで、いろいろわかったことがあるんです」
「本当ですか!」
「場の量子論というものが、私の考えている意識障害の原因、いえ意識障害そのものモデルに近く……いえ、詳しい経緯は割愛しましょう」
慌てて菊が口をきり、申し訳なさそうにわずかに首をすくめた。
自分の世界に入りかけていたようだ。
フェリちゃんからもらったアイスティーで一息つきつつ、菊は続ける。
「一言でいうと、私たちは思っているよりずっと電磁波の影響下にあったんです。
いえ、“電磁波を知覚している”と言ってもいい」
「渡り鳥とかが、体の中に精密な磁気コンパスを持っている、みたいなかんじのことですか?」
「はい。ちなみにカタツムリも持っています」
マジで!?
「ヒトでも神経のある組織が、電磁場の受信器として働いていたりしますし」
「……すみません電磁場ってなんですか?」
「簡単にいえば、電気が働く範囲、でしょうか。
重力場とは重力が働く地球のこと、ここから考えるとわかりやすいと思います」
私は頷いた。
そしてフェリちゃんからアイスティーをもらう。
冷たくておいしく、一気に3分の1まで飲み干してしまった。
……ってどこから出したんだろう?
「言うなれば、私たちの体内には電磁場が存在するのです。
さらに体内の電磁場は、環境の電磁場と連続しています」
「環境と連続?」
「環境とは地球――地球は磁石と同じです――や宇宙をさします。
環境の電磁場が変われば、体内の電磁場も影響されて変わるのです。
ところで磁気嵐をご存知ですか?」
「たしかオーロラを起こすとか……それしかわかりません」
「公子ちゃんおかわりいる?」
「あ、はいお願いします」
グラスを渡して話に戻る。