第19章 会議は笑わない
菊とアーサーだ。
全力疾走したあとのように呼吸を荒くしている。
「っ……はっ……お、おい撒けたか……?」
「どうやら……その……ようで……す……っ!」
「だっ大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄れば、「No problem」とでもいうように、アーサーが手を肩まであげて私を制止した。
そしてネクタイを緩めながらふらふら歩き出す。
彼はドカッと椅子に座り、盛大に息を吐いた。
菊もフェリちゃんに手を貸され(もはや介抱のレベル)、椅子に腰掛ける。
二人が落ち着いたところで、私は尋ねた。
「……一体どうしたんですか?」
「アルを振り切ってきたんだよ。この部屋に集まるのは、このメンバーって決まってたからな」
よくわからない私に、菊が説明した。
「あのまま休憩中会議場にいたら、転校生が休み時間群がられるように、公子さんも皆さんに囲まれると思ったのです」
た、たしかに……
「だから一時的に連れ出そう、ということになってな。ちなみに停電させる計画の発案者はこいつだ」
ルートがえへへーと笑うフェリちゃんをさす。
……フェリちゃんが?
無垢でしまりのない笑みの奥底になにかが見えそうな気が……しないしないするわけない。
「ったく驚いたぜ。いつまでたっても戻らないから何してるかと思えば、『今から13分後に停電させる。その後倉庫Cに集合せよ』なんてメールが来るんだもんな」
「アルフレッドさんの手をくぐり抜けるのはいささか骨が折れましたが、少し楽しかったです」
「お前なぁ……」
呆れつつも苦笑するアーサー、ふふっと微笑む菊。
なぜ和みモードなのだろうか理解に苦しむ。