第19章 会議は笑わない
ハッと見ると、下を向いたまま耀が席を立ち上がっていた。
「……イヴァン、ちょっと顔かせある」
「なにかな?」
耀はイヴァンを一瞥すると、身を翻して扉に向かっていった。
外で話すということらしい。
イヴァンはやれやれというように立ち上がり、ならって歩きだした。
そして扉の手間で、首だけをこちらに曲げ、
「なんか呼ばれちゃったからあとで聞かせてね、公子ちゃん」
そう言って、不気味なほどほがらかに微笑んだ。
無表情な背中が扉のむこうに消える。
「……」
扉のしまる音が、やけに響いた。
一同は静まり返ったまま、蝋人形のように固まっている。
頭の中で“あとで聞かせてね”という言葉がぐるぐる回りだす。
――それは、つまり、
――逃げるなよ、ってこと?
ガッターン!
「ひいぃぃっ!?」
静けさを破ったのは、今度は派手な衝撃音だった。