第19章 会議は笑わない
私はいざ真正面を向き、勢いよく話し出す。
「あのです、ね……」
が、すぐその語尾は弱々しく消えていった。
同時に頭の中が白くなって、手が汗ばんでいく。
私という一点に集まった視線、静寂の中やけに反響する自分の声。
……やべーよこれは……想像以上に……やべーよ……
急激に高まる緊張感に、考えていた言葉ががらがらと崩れていった。
言葉につまる私、耳鳴りがしそうな沈黙の中、
「私がご説明いたします」
キング・オブ・エアリーダーが声を発した。
それからの菊は、まさに「素敵! 抱いて!」と叫びたくなる気迫だった。
私の最初の出現からここに至るまでの経緯、軽い紹介。
肝心な箇所――アーサーのテレポートやARDOのこと――をうまくよけた説明には、不思議に思いつつも脱帽した。
「――ということまでが今わかっている全てです」
菊はそう締めくくる。
聴衆といえば、圧倒されてみんな言葉を失っていた。
驚愕か、馬鹿馬鹿しくて、“別世界”からなんて突飛なことが信じられないのか、なんの感情でかはわからない。
しかし、異変が起きている状況、“本田菊”による至極真面目な説明を、一蹴できるとは思えなかった。