第18章 制約には切手を
といっても、事情を知っていて、かつ会議場にいるのは耀、菊、アーサー、ギルだけだ。
フェリちゃんと隊長の姿は見えない。
アルにはなんだかんだと説明してなかった。
(しかし誰かから強引に聞きだした可能性も十分にある。菊とか菊とか菊とか……)
親分の腕からすり抜けながら考える。
皆「俺の口からは言えねえ」みたいな気遣いを、ことによるとただの反発をしそうだ。
一体なぜそんな隠すのかね……。
「アーサーさんは無実です。私はそう信じたいです」
「菊……!」
「ですが、あの公子さんを見せられては……」
「ばかー! 菊のばかーーーっ!!」
2人が仲良くたわむれているのを横目に、私は縄をとこうと試みる。
その手が、横からとられた。
見上げると、アルが複雑な表情で私の手首を掴んでいる。
「……俺だけ知らない」
ぽつりと、彼には珍しく呟いた。
「え?」
「あの場にいた俺だけ、公子のこと教えてもらってないんだぞ」
拗ねたような口調、やや左下にそらされた視線。
手の力は、初めて遭遇したときより強いものだった。
思わずときめいていると
「だっ、だからアーサーなんかの縄をとく前にやることがあるだろ! だいたい急に消えたりしてまた会えたと思ったら、なんなんだいこの状況! 意味不明だよ!!」
照れ隠しか、早口でまくしたてた。
ちらっと目が合うが、すぐ、実に瞬時にそらされてしまう。
ツンデレなんですか? 兄のがうつったんですか? と真顔で尋ねようかと思った。
「わかりました……あの、そろそろ手を……」
「……」
「……えっと……」
「……」
そっぽを向かれてしまう。
恥ずかしいからそろそろ手を離してほしいんだけども……