第18章 制約には切手を
「うっ……ご心配をおかけしま――」
「しっ心配なんかしてねぇよ!!」
相変わらずの反応にクスッとすると、アーサーは余計に憤慨した。
それをいさめていると、
「それより、体はなんともないのか?」
「え?」
そんなことを聞かれる。
私は、トリップした直後に2回とも(いや3回か)体調を崩したことを、アーサーに話したのを思い出した。
自分がこんな状態なのに、私を心配してくれている……?
「……だ、大丈夫ですよっ!」
「そうか、ならいい」
私の返答に、アーサーは穏やかに笑む。
その姿に、私はぎゅっと胸をおさえた。
「私……私、誤解していたのかもしれません。アーサーさんは、やっぱり素敵な紳士だったんで――」
「はいはいエセ紳士、芝居はそこまでや」
言葉を遮られ、うしろから手を引かれる。
見上げると、にこやかに笑う親分がそこにいた。
ふわ~っとした猫っ毛、宝石のような緑の瞳には、親しげで柔らかな明かりが灯っている。
それになんというか……おひさまのにおいがする……!
「お嬢ちゃんそんなかわえーかっこでこの変態に近寄ったらアカンで」
「ってさりげなく腰に手回してんのはどこのトマト野郎だよ!!」
「早よお嬢ちゃんになにしたか、あと知ってること全部吐きやクソ眉毛。なんや知ってそうな亜細亜のメンツはだんまりやし、ギルはのらりくらりやし」
早口でまくし立てる親分からは、苛立ちがにじみ出ている。
もしかして、誰も“私”について説明していないんだろうか?